社会福祉士兼ライターの紙月日記

社会福祉士資格を持つライターが、社会保障に関するニュースや時事ネタ、娘の新生児脳梗塞などについて書くブログ

時事ニュース

「イスラム」への過剰な恐怖にみる、偏見の生まれやすさ

3月1日付の朝日新聞にこんな記事が出ていた。
記事のリンクはそのうち切れてしまうと思うので、
ちょっと長いけど引用しておきます。

静岡県御殿場市の男性が、自ら立ち上げた任意団体「日本イスラーム圏友好協会」名義で沼津信用金庫(本店・静岡県沼津市)に口座を開設しようとしたところ、団体名に「イスラム」が含まれることを理由に断られた。男性は「『イスラムは怖い』という偏見そのもの」と話している。

 男性は斉藤力二朗さん(66)。エジプトのカイロ大卒で、中東系銀行の日本勤務のほか、日本の大学でアラビア語講師などを務めた。その後、10年前からイスラム圏の政治情勢や事件などについて、自らのブログなどに書いてきた。

 過激派組織「イスラム国」(IS)が日本人を殺害したとみられる事件が起き、その影響で「イスラムは怖い」という偏見が日本に広がっていると感じた。「正しい情報を発信したい」と1月に協会を設立。メールマガジン発行や講演会開催といった活動を始めるにあたり、資金管理用の口座を作ろうと、2月24日に沼津信金上町支店(御殿場市)に電話で相談すると、職員から「イスラムという名前が入った団体では口座は開けない」と言われたという。

 支店長は朝日新聞の取材に「過剰だと思われるかもしれないが、(ISの事件で)イスラムに対する悪いイメージもあり、慎重にならざるをえなかった」と説明。支店の判断は沼津信金本部も了承したという。

 本部経営企画部リスク統括課長は取材に「将来、イスラムの教えから逸脱した組織などに、口座から資金が流れる疑義がまったくないとは言えないことなどを総合的に判断した」と答えた。

えっ? どういうこと?? 
名前に「イスラム」が入っているから、銀行口座が開けない??
それどういう判断基準なの???
思わず読み直してしまった。

金融機関としての常識が疑われる対応

このニュースの驚くべきところは、
そういう非常にレベルの低い判断をしているのが、
半世紀以上の歴史を持つ、地域に根差すれっきとした信用金庫だということだ。
(wikipediaによると、沼津信用金庫は1951年に組織変更して誕生)

しかもさらにさらに驚くのは支店長のコメント。
「過剰だと思われるかもしれないが、(ISの事件で)イスラムに対する悪いイメージもあり、慎重にならざるをえなかった」

だいたいこういう話題のとき、支店長的な立場の人は
取材を受けると「それは誤解である」的なコメントをして火消しに走ります。
ところがこの支店長は「慎重にならざるをえない」と正反対のコメント。
本当にある程度の正当性があったんだと思っているのかもしれないけど。

いともたやすくできあがる偏見

沼津信金に対してひとしきりあきれた後で思ったのが、
「金融機関で働く人でもこんなレベルの偏見を持つんだ」
ということ。

地方で暮らしていると、地元の金融機関で働く人たちって
それなりにステータスがあるイメージだけど、
その人たちでも、こうもふわっと流されてしまうんだな、と。

ISは過激派組織で、宗教としてのイスラム教とまったく違う。
イスラムの指導者たちが「あれは宗教ではない」と明確に否定しているし、
その点はニュースでも繰り返し触れられている。

それなのに、「イスラム国」⇒「イスラム」⇒「危険」
みたいな馬鹿みたいな変換が、こうも簡単に行われてしまう。

これって、福祉の世界に身を置く人たちにとっては、
本当にがっくりくる話じゃないだろうか。

僕は社会福祉士の実習で知的障害者施設に行ったのだけど、
その職員さんや法人の理事さんたちは何度も
「地域の偏見に対していかに戦ってきたか」を聞かせてくれた。
施設ひとつ建てるのにも反対運動が起こり、
地道に長い時間をかけて理解を得ていく。
そうして、何とか今の環境ができあがったんです、と。

間違いなく、これまで多くの人たちが必死になって積み重ねたものが、
いまの知的障害者たちの権利を作ってきたのだと思う。
まだまだ十分には程遠いけれど、時間をかけて、一歩ずつ前進してきた。

でも、今日のニュースをみて、
こうやって積み重ねたものでも、
ささいなきっかけですぐ吹き飛んでしまうんじゃないか
何十年もの積み重ねが一瞬でマイナスになってしまうんじゃないかと
改めて暗い気持ちになった。

偏見を取り除くのはこうも難しいのに、できあがるのは一瞬だ。

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