社会福祉士兼ライターの紙月日記

社会福祉士資格を持つライターが、社会保障に関するニュースや時事ネタ、娘の新生児脳梗塞などについて書くブログ

福祉のはなし

すごい発想! ネット広告を使った自殺予防のアウトリーチ

ソーシャルワーカーに求められる役割として
社会変革の重要度が増していることは
先日こちらのエントリーでもお伝えしました。

でも、
「社会変革なんて言われても、大仰すぎてよくわからん」
「大きい予算があるわけでもないのに、そんな活動は無理だろ」

と思う人が多いのではないかと思います。

僕もそうです。
「いや、理想はわかるけど、本当にできんの?」
って、心のどこかで思っている自分がいます。

でもこの前、ふとしたことで
すごいアイデアで社会変革を実践しようとしているNPOを知りました。
本日はその紹介をしたいと思います。

googleのリスティング広告を活用

その団体の名前は「NPO法人OVA(オーヴァ)」。
活動内容は、自殺リスクがある人々に対する働きかけです。

働きかけ、と一口に言っても、その手法がすごい。

googleが提供する広告サービスに「google adwards」というものがあります。
googleを使って何かしらの検索ワードを入れた人に対して、
その検索ワードに関連する広告を表示する
、というものです。
(こういう仕組みをリスティング広告と呼びます)

OVA代表の伊藤次郎さんは、この仕組みを使って
自殺関連の用語を検索した人に、「相談に乗りますよ」という広告を表示。
広告をクリックした人から届いた相談メールに返信をして
心療内科などの必要な支援につなげる、

という活動を立ち上げました。

このアイデアを思いついたのが2013年6月末。
それからわずか3日間で検索広告の設定を行い、
7月中旬にはもう活動を始めていたそうです。

アウトリーチの新たな手法を体現

この経緯を知って、本当に目からうろこが落ちました。

アウトリーチって、社会福祉士はもちろん
福祉にかかわるすべての人に求められる行動ですが、
「どこの支援機関にも接触のない人を見つける」ことって
本当に難しいこと
だと思うんです。

だって、そういう人が困っていることは
「社会の誰も知らない」から。
人知れず苦しんでいるのに、誰も知らないから救えない。

それを、自分を救ってくれる情報がないか、
わらをもつかむ思いでネットで検索した人に
広告を打つというまったく新しい手法を思い付き、
アウトリーチの新たな可能性を体現しています

もちろん広告を打っているのでお金がかかるわけですが、
OVAのサイトによると、
「自殺の危機にある人1人にリーチするための広告費用は約137円」
だそうです。

「夜回り2.0」のネーミングも秀逸

伊藤さんはこの自殺予防の取り組みを
「夜回り2.0」と呼んでいるそうです。

2004年ごろからウェブ関連の技術が飛躍的に進化し、
「もはやインターネットはこれまでと違うバージョンになった」
という意味で、その状態が「WEB2.0」と呼ばれました。

(1.0から1.2みたいな延長線上にある進化ではなく、
新たな概念の2.0にアップデートした、というニュアンスですね)

この「夜回り2.0」というネーミングも、
自殺志願者を救う活動をしてきた「夜回り先生」にあやかりつつ、
活動にインターネットを使っていることや、
既存の夜回りとは違う価値を生み出していることを端的に表していて、
すごくキャッチーで素晴らしいと思います。

柔軟な発想と深い想像力が社会変革を生み出す

伊藤さんがこちらのインタビューでこう答えています。

一体、どうしてこんな言葉を、現実やSNSなどで言わず、検索エンジンに打ち込むのだろう、と。きっと耐え難い苦痛を抱え、誰にもそれを打ち明ける事ができず、ひとり苦しんで思わずスマホから打ち込んでしまったのだろう、とその姿をビジュアルに想像し、その苦痛や悲しみなどが伝わってきて、凄まじいショックをうけました。「死にたい 助けて」の先に救いはない。その宛先なき叫びに、なんとか宛先をつくらなければいけないと、約2週間後の7月14日には活動を始めていました。

伊藤さんの柔軟な発想が、最新の技術を活用したアウトリーチ術を生み出し、
深い想像力が、その活動を実行に移させた、
ということでしょう。

もちろん、関係機関と連携を深めて、
地域の福祉ネットの中で支援対象者を浮かび上がらせるという手法は
まったく色褪せませんし、何より大事なアプローチです。

それと同時に、技術革新によって
今までとは違うアプローチも、実は可能
になってきています。

いま、何が問題なのか。それを解決するためには何が必要なのか。
福祉にかかわる人びとには、本当の意味で柔軟な発想と
広い視野が求められているんだと痛感しました。

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