社会福祉士兼ライターの紙月日記

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福祉のはなし

「ホームレスの実態調査」がまったく実態を表していない理由

4月末に厚労省から
「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について」
という調査結果が公表されました。

2015年1月に実施された調査によると、
ホームレスは全国で計6541人
前年から967人(12.9%)減りました

ちなみに、2011年調査では1万890人、
12年調査では9576人、13年調査は8265人、
14年調査は7508人と、人数は毎年減っていく一方です。

でも、これってどれくらい「実態」を表しているんでしょうか。

今日はこの数字の持つ意味について考えます。

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実態にそぐわないホームレスの調査方法

そもそもの前提としてきちんと考えないといけないのは、
この調査の指す「ホームレス」とは何か、ということです。

そもそもこの実態調査は、
2002年に成立したホームレス自立支援法をもとに、
施策の効果を図るための実態調査として行われるものです。

そしてこの法律の第2条には、
この法律において「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう。
という規定が置かれています。

要するに、この実態調査の対象となっているのは、
「公園や川や道路や駅などで寝起きしている人たち」
となるわけです。

そしてさらに重要なポイントが、この調査の実施方法。

資料を見ると、
「市区町村による巡回での目視調査」と書いてあります。

つまり、役所の担当者が公園やら川やら駅やらを巡回して
「あ、あのひとホームレスっぽいな」
という人たちをカウントしているということです。

え? それって本当にちゃんとカウントできてる??

ホームレスといっても、何もみんながみんな
ぼろぼろの服を着て、リヤカーを引いて
段ボールハウスで暮らしているわけではありません。

路上に停めた車やマンガ喫茶で寝泊まりしていたり、
普通にスーツを着ていても実は帰る場所がなかったりと、
その実態は本当にさまざまです。

しかし、この調査方法では、こうした
「一見するとわからないホームレス」については
永久にホームレスにカウントされない

ということになるのです。

実態とかけ離れた数字が、自治体の対策を遅らせる

「ホームレスらしいホームレス」の数はこの調査でわかっても、
「ホームレスらしくないホームレス」は決してわからない。

この事態が何を生み出すかというと、
自治体の取り組みの致命的な遅れです。

たとえば今回の調査結果でいうと、
青森県のホームレス数は1人
岩手県は3人、秋田県は2人などとなっています。

そもそも、この調査がおこなわれているのは真冬の1月。
この時期、強烈な寒さに見舞われる東北で
屋外に「ホームレスらしいホームレス」がいるわけがありません

彼らは路上で暮らすことができないため
車を使ったりマンガ喫茶を使ったりと
路上とは違うところに生きる場所を求め、水面下に潜っていきます。

もしくは、同じ東北の宮城県で117人が確認されているように、
支援団体が存在するなど、体制の整っている地域へと移動していくのです。

ところが行政としては
「そうか、うちの県ではホームレスはこんなに少ないのか」
ということになれば、ホームレス対策に予算などつけません

貧困を生み出す元凶は県の中に存在するのに
手が付けられないまま、水面下に潜る貧困者ばかりが
増えていくことになるのです。

調査方法を再考すべき

確かに、ひと昔前の
「ホームレス=路上生活者」みたいな時代であれば
現在の調査方法でも大丈夫かもしれません。

ですが、いまは貧困の形も多様化・複雑化し、
一面的な定義だけでは、とても実情を把握することはできません。

いまこそ、国はこの調査の在り方について
より実態に即したものになるよう、
考え方を見直すべきだと強く思います。

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