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【解説】「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」を読む5つのポイント<下>

公開日: : 最終更新日:2015/03/14 社会福祉士関連 , , ,

定義、見直しでどう変わった?

「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義を読む」
第2回です。

昨日のエントリーでは、今回まとめられた2014年版定義に加え、
過去にあった1982年版定義と2000年版定義を紹介、
改訂が必要になる背景について書きました。
(というかそこまでで時間切れに……)

本日はいよいよ、00年版と14年版定義でどう変わったのか、
5つのポイントに焦点を当てながら読み解いていきます

さっそくいきましょう!

①「社会を変える」役割に重点

まず注目するのは、00年版定義と14年版定義の第一文
こういう文章の場合、一番大事なことは一番最初に書くのが鉄則ですので、
ここを分析すると、それぞれの定義で重要にしている
価値観がみえてきそうな気がします。

00年版の第一文は

ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワーメントと解放を促していく。

となっているのに対して、
今回見直された14年版の第一文は

ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。

となっています。

14年版定義で新たに加わった文言として、
「実践に基づいた専門職であり」という部分があります。

そしてその「実践に基づいた専門職」とは何をするのかというと、
「社会変革と社会開発、社会的結束、およびエンパワメントと解放を促進」
を担うと記されています。

この社会変革~~以降のずらずらと例を挙げている部分ですが、
要はどれも「より良い社会をつくるために、社会を変えていく」
ということを言っているんですよね。

どこの部分も、「いまある不平等を訴えてそれを是正する」
(たとえば途上国で子どもたちが学ぶ権利を勝ち取ること)
ことを言っていて、表現は違えど、示している理念はほぼ同じです。

それをあえて、言葉を変えて何度も繰り返しているのは、
「我々ソーシャルワーカーは、主体的に社会を変えていく役割を担うんだ」
という自覚を強烈に求めている
からではないでしょうか。

そして、「実践に基づいた専門職」と明記しているあたりにも、
議論で終わらせるのではない、という決意が垣間見えます。

②マクロ(政治)レベルの取り組みを強調

14年版定義には、定義本体の後にそれを補う注釈があるんですが、
ここも読み込んでいくと、社会変革についての言及がたくさんあります。

まず「中核となる任務」の項目。
ここでは、先ほど挙げた「社会変革」と「社会開発」などの
用語の意味合いを説明していますが、その説明の中に

社会変革の任務は、個人・家族・小集団・共同体・社会のどのレベルであれ、現状が変革と開発を必要とするとみなされる時、ソーシャルワークが介入することを前提としている。
(中略)
社会開発という概念は、介入のための戦略、最終的にめざす状態、および(通常の残余的および制度的枠組に加えて)政策的枠組などを意味する。

という記述があります。

「社会変革の任務」のくだりでは、個人や家族だけでなく、
社会のレベルであっても「ソーシャルワークの介入が前提」と
位置づけている
ことがポイントです。

要はミクロからマクロまですべて、ということですが、
あえて「共同体」や「社会」といった大きい単位まで例示しているのは
「そこも俺たちの守備範囲なんだぜ!」
とマクロレベルの働きかけを強調している
ようにみえます。

また、社会開発に関する引用部分では、
「政策的枠組」もソーシャルワーカーが働きかける対象に
含まれると高らかに宣言しているわけで、
ここからも政治も巻き込んで変えていくんだという
強い決意
が読み取れますね。

さらに今度は「実践」の項目から引用します。
ここでも、

ソーシャルワークの実践は、さまざまな形のセラピーやカウンセリング・グループワーク・コミュニティワーク、政策立案や分析、アドボカシーや政治的介入など、広範囲に及ぶ。

と明記されていて、やはりソーシャルワーカーの主たる役割を
政治レベルまで視野に入れていることがわかります。

③ソーシャルワークは学問である

続いて、14年版定義では新たに、
「ソーシャルワークは学問である」と謳われました。

学問であるから何なんだ
という疑問がわいてきそうですが、
「学問であること」は「普遍性と専門性の証明」ではないかと考えます。

ソーシャルワークは、決まりきった正解のない世界です。
向き合う対象者によってふさわしいアプローチは違うし、
10人の支援者がいれば10通りの支援方法があるでしょう。

それ自体は決して非難されることではないのですが、
そういう状況はともすれば、
支援者個人の価値観や経験値だけで、支援の質が左右される
という事態にもつながりかねません。

14年版定義の注釈部分では、
「ソーシャルワークは、複数の学問分野をまたぎ、
その境界を超えていくものであり、
広範な科学的諸理論および研究を利用する」
と明記されています。

これはつまり、個人の経験値で質が左右される支援ではなく、
あらゆるアカデミックな知識を総合して、
「誰が支援に入っても、ある程度同じ支援水準が提供できる」
ことを目指しているのではないでしょうか。

「一人で何でもできるスーパー支援者」がいればいいのではなく、
「誰でも支援が提供できるよう、学問的な知見に基づいた手法」
を確立していく

その水準をしっかりと共有したうえで、
そこに個人の経験値を上乗せして専門性を積み上げ、
より良い支援を提供していく。

これまでも実践されてきた内容ではありますが、
そうした精神を定義に盛り込むことで、
私たちの目指す方向性として確固たるものとする。

それが、この「学問宣言」の狙いの一つだと理解しました。

④「欧米中心主義」からの脱却

これはなかなか興味深いなぁと思うのですが、
14年版定義の注釈部分には、ところどころに、
「欧米中心」からの脱却を謳う文言があります。

ちょっと長いんですけど、引用してみます。

この定義は、ソーシャルワークは特定の実践環境や西洋の諸理論だけでなく、先住民を含めた地域・民族固有の知にも拠っていることを認識している。
植民地主義の結果、西洋の理論や知識のみが評価され、地域・民族固有の知は、西洋の理論や知識によって過小評価され、軽視され、支配された。
この定義は、世界のどの地域・国・区域の先住民たちも、その独自の価値観および知を作り出し、それらを伝達する様式によって、科学に対して計り知れない貢献をしてきたことを認めるとともに、そうすることによって西洋の支配の過程を止め、反転させようとする。
ソーシャルワークは、世界中の先住民たちの声に耳を傾け学ぶことによって、西洋の歴史的な科学的植民地主義と覇権を是正しようとする。こうして、ソーシャルワークの知は、先住民の人々と共同で作り出され、ローカルにも国際的にも、より適切に実践されることになるだろう。

これ、結構強烈な書き方ですよね。

「地域・民族固有の知は、西洋の理論や知識によって
過小評価され、軽視され、支配された」
「西洋の支配の過程を止め、反転させようとする」
「西洋の歴史的な科学的植民地主義と覇権を是正しようとする」

このあたりなんて、欧米が強い権力を持つ国連だったら
どんな文書であろうと絶対に採択されなそうな文言
です。

この強烈な思いは、そのまま世界の先住民たちや、
欧米以外の国々の人たちの不満の強さを表しているんでしょう。

日本で暮らす僕には想像できないような苦しさがあり、
その原因の一つに西洋中心主義がある、ということでしょうか。
この部分の記述にどんな背景があるのか
それだけで一回分ブログが書けそうです。

深い分析ができなくて残念ですが、今回の定義は
欧米がもたらした「近代的な知識」だけではなく、
「先住民を含めた地域・民族固有の知にも拠っている」

ことをおさえておきましょう。

弱者に目を向けるソーシャルワークの定義として、
多様性の重要さを強烈に伝える、
とっても素晴らしい視点だと思います。

⑤グローバル定義をもとに「階層定義」が認められた

今回のエントリーの表題にもある通り、
14年版定義の題名は
「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」
です。

題名の中にある「グローバル」という文字、
実は過去の定義には含まれておらず、
今回の改訂で加わったものなんです。

なんでわざわざ「グローバル定義」なのか。
定義の本体部分の一番最後に、その理由が書かれています。

この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい

この部分を読んだだけだとちょっと意味がわかりません。
僕もどういう意味なんだろうと思いましたが、
原文の英語を見てようやく理解しました。

The above definition may be amplified at national and/or regional levels

「amplify」は拡充する、とかいう意味ですが、簡単に言うと
「上に書いたグローバル定義だけど、これはナショナルとか
リージョナルのレベルに拡充してもいいよ」

と書いてあります。

日本語訳が「展開してもよい」となっているので意味が通りづらいですが、
グローバル定義をもとにして、
ナショナル(国単位)やリージョナル(地域単位)の定義をつくっていいよ
と言っているわけなんです。

大元の規定としてグローバル定義があり、
その下の階層にリージョナルとナショナルの定義を置く。

(ちなみにここでいうリージョナルは
「関東地方」みたいな小単位を指すのではなく、
「アジア太平洋」「アフリカ」「北米」「南米」「ヨーロッパ」
の5地域のことです)

確かに、グローバル定義にあらゆる考え方が含まれているとはいえ、
地域の実情に即して、もっとわかりやすく、具体的に
書いた方が理解されやすい
ことも多いですもんね。

ますます、このグローバル定義って、憲法みたいだなと思います。
日本では、憲法の考え方を絶対的な基礎にして、
それぞれの法律ができあがっています。
ナショナル定義とかも、そういう関係性になるんでしょうね。

最後に

ここまで、グローバル定義を読み解くポイントを
5つに絞ってご紹介しました。

これ以外にも、めぼしい内容もあるんですが、
僕の理解がまだまだ不十分だということもあるので、
またの機会にご紹介したいと思います。

日本語訳確定版が出たことで、
今後はこの定義を広く伝えていくことが
大きな目的になっていくと思います。

偉い人から狙いなどを聞く機会もあるかもしれないので、
また知識が入りましたらお伝えいたします。

===

ソーシャルワークのグローバル定義、
日本語訳確定版の原本を確認したい方はこちら
00年版定義を確認したい方はこちらから!

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