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ギリギリの人数で障害児を見守る、綱渡りの療育現場

公開日: : 最終更新日:2015/03/17 福祉のはなし

本当に残念なニュースが入ってきました。

大阪・豊中市で2月末から行方不明だった6歳の男児が
15日午前、市内の池に浮かんで死亡しているのが発見されました。

報道によると、この男児には軽度の知的障害があったそうです。
最後に目撃されたのは、自身が通っていた障害児通所支援施設で、
発見現場はその施設からわずか95mほどの地点でした。

死後数日経っているとみられるとのことで、
行方不明になった直後に池に落ちてしまい、
ようやく浮かんできて…ということなのかもしれません。

細かい経緯を知らないのでこの件について勝手なことは言えませんが、
今日は僕が考える一般論として、
障害児を支援する療育現場の難しさについて書きたいと思います。

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思いもよらぬ動きをする障害児たちを見守る難しさ

障害児支援に関する基礎知識

福祉業界にあまり詳しくない方のために前提として説明しておきますと、
障害児の支援は現在、児童福祉法に基づいて行われています。

その支援の仕組みは大きくいうと
都道府県が受け持つ「障害児入所支援」と、
市町村が受け持つ「障害児通所支援」に分けられます。

入所支援というのは、簡単にいえば
児童が施設に暮らし、そこで一体的な支援を行うこと。

そして通所支援というのは、自宅で暮らす児童が
通ってきて様々な福祉サービスを受ける支援のことです。

知的障害や発達障害などを持つ子供の場合でも、
専門技術に基づいた必要なトレーニングをしてあげることで
社会生活に必要な様々なスキルを獲得する手助けが可能
です。

入所支援でも通所支援でもこうした取り組みを行っていて、
この支援のことを、医療と保育を組み合わせて「療育」と呼びます。

今回亡くなった男児が利用していたのは、障害児通所支援。
この支援には「児童発達支援」「放課後等デイサービス」があり、
この子は未就学児だったので「児童発達支援」を利用していたのだと思います。

(児童発達支援は障害のある未就学児を対象に療育を行い、
放課後等デイの場合は、小学生~高校生くらいまでに対して支援を行います)

通所支援で行われる療育の手法は一言では言えませんが、
室内での療育以外にも、屋外へ散歩にいったり、公園で遊んだりもします。
おそらく、今回の事故はその中で起きたのではないかと推測します。

屋外で一瞬目を離すだけでいなくなる

子供たちを外で遊ばせるのは通常の保育園でも同じですが、
特に自閉症を持った子供などの場合、その症状として
とにかく動き回ること(多動)が少なくありません

「子供はいつだって動き回るものだ」
と思う方もいると思いますが、
ここでいう「多動」は、それとは明確に違います。

普通の子供の場合、やんちゃに動き回っていても
たとえば誰かを追い掛けているとか、好きなものに駆け寄るとか、
彼らが動き回る何かしらの理由があります。

でも、多動の場合はそうではなく、
何の脈絡もなしに一瞬で動いていなくなってしまうのです。

気づけば視界から消え、どこにいったか見当がつかない。そんな状態です。

通常だと、「児童の集団」に対して目を向ければ見守りができますが、
多動の子供たちに対しては、個別に、かつ注意深い見守りが必要なのです。

屋外活動でのリスクはゼロにはできない

たとえば自閉症があって多動の子のような場合、
屋外での活動の最中には職員がマンツーマンでつきっきりになる
ことも珍しくありません。

ですが、放課後等デイサービスに来ている子供はほかにもいるので、
その間、ほかの子供たちへの見守りがどうしても弱くなります。
逆に、ほかの子供たちの気をとられると、その子への見守りが弱くなります。

もちろん、施設もそういった事情を十分に考慮して
子供たちをグループに分けて屋外に出る時間をずらし、
手のかかる子ばかりが重ならないようにする
などの注意をしています。

ただ、それでも職員の一瞬の隙をついて、
子供がいなくなってしまうことは十分あり得ます

よほどベテランの職員がついていれば
そうした危険性も減るかもしれませんが、
それでもゼロにはなりません。

これは、職員の配置数が規定より少ない違法状態である、
というレベルの話ではなく、職員数の規定を満たしていても十分ではなく
そうしたリスクはなくせない、という現実があるんです。

(もっと職員の配置数を増やせ、という意見もありそうですが、
福祉業界の深刻な人手不足などの面から考えても、
あまり現実的な議論にはならないように思います)

さらに、今回の施設は昨年8月に開所したばかりだったようです。
職員の経験が浅く、万が一の事態を避けるためにどう行動するのか
十分な危機管理ができていなかった可能性もあります。

ヒヤリ事例すら起こさせない最大の努力を

「1:29:300」で表されるハインリッヒの法則というのがあって
1つの重大な事故が起こる背景には、
29の軽微な事故と、300のヒヤリとする体験が存在する
と言われます。

今回の事故は、最悪の結末を迎えてしまいました。
同じことを二度と起こさないためには、
まずはヒヤリ事例の数を減らしていくしかありません。

小さなことにも絶えず気を配ることで、
最悪の事故の芽を未然に摘んでいく。

現場で働く人たちには、その思いを強く刻んでほしいと思います。

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  • 【紙月】
    紙媒体を中心に書くライター。
    福祉業界での実務経験がない中で、
    社会保障制度を詳しく学びたいと
    社会福祉士めざして一念発起。
    仕事の合間を縫って効率的な勉強法を実践し、
    第27回試験に一発合格。
    ツイッター @kamitsuki2



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