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過労死をなくす覚悟、ホントにあるの? 過労死防止大綱(素案)に物申す

今日も働き方に関する話題を。

4月6日に厚労省が、「過労死防止大綱」の素案を公表しました。

正式名称は「過労死等の防止のための対策に関する大綱(案)骨子」
同日にあった過労死等防止対策推進協議会で資料が示されました。
(元資料を読みたい方はコチラへ)

2014年6月に「過労死等防止対策推進法」(条文はコチラ)が成立、
この法律によって政府は「対策に関する大綱を定めなければならない」とされていて、
今回示された素案は、そのたたき台です。

厚労省は6月までに正式な大綱をまとめる予定です……が、

ちょっと待って!

この素案の内容でほんとにいいの?
まだまだ、努力足りなくない?

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大綱の素案で示された3つのポイント

素案のなかで示された重要なポイントは次の3点です。

1)将来的に過労死をゼロにすることをめざし、
2020 年までに週労働時間 60時間以上の雇用者の割合を5%以下、
年次有給休暇取得率を 70%以上――などの目標を早期に達成する

2)過労死の発生要因などはまだまだ明らかでない部分が少なくないため、
実態解明のための調査研究を進めていく

3)過労死防止の意識啓発や相談体制の整備、
民間団体の活動への支援を進めていく

要するに、
数値目標を掲げたうえで、
過労死が起きる背景の調査を多角的にやって、
意識啓発や相談窓口などの予防策も進めていきます

っていう内容ですね。

これまでと変わらない対策で過労死はなくせるのか

この素案に対する論点は色々あると思いますが、
大きなポイントとして「実効性があるのか」
という部分について考えます。

正直なところ、今回の素案で示された内容って
「別に大綱がなくたってできるじゃん」
と思う点ばかりです。

もちろん法案が出来て、それを根拠にしてようやく予算が出せる
というオトナの事情はあるにしても、調査研究と意識啓発なんて、
程度の差はあれど、これまでだって行われてきたことです。

さらに、大綱をとりまとめる意義として
行政が数値目標を掲げるということは重要だと思いますが、
これについても効果は甚だ疑問。

たとえば2020年までに有給取得率を70%以上にするという目標値。

一見すると目新しそうですが、実はすでに、
2010年6月に閣議決定された政府の新成長戦略に明記されていて
今回の素案の記述は、いわば目標の再掲
に過ぎません。

厚労省にとっては、すでにこれまで目標としてあったものを
書いているだけなので、「これまで以上に頑張ります!」
くらいの気休めの効果しかないようにも思えてきます。

もちろん、大綱ができる以上まったく効果がないとは言いませんが、
少なくともこの素案からは、「絶対に過労死をなくしてやる!」
という決意は、ほとんど感じ取ることができませんでした。

もっと野心的な提案を!

この資料が示された「過労死等防止対策推進協議会」っていうのは、
弁護士や学者のほか、労使関係のお偉いさん、
さらに過労で家族を亡くした人たちも参加しています。

協議会の場では、そうした遺族のみなさんから
「終業と始業の間に一定の間隔を取るよう義務付けるべきだ」
「1日の労働時間に上限を定める検討を始めてほしい」

といった意見が出されたようです。

これには私もまったく同感です。

いまの政府の政策は、「残業代ゼロ法案」とも評される
労働基準法の改正案にみられるように、
基本的には企業が労働者を使いやすくなる方向
大きく舵を切っています。

この流れはともすれば、より人間らしい働き方を目指そうとする
過労死防止法の精神を台無しにするものです。

こうした状況の中で政府はわざわざ大綱を作るのだから
「国は労働者のこともしっかり考えているんだ」
ということを明確に示すためにも、

焼き直しの目標値などではなく、
もっと野心的な対策を盛り込んでいく責任があるはず
です。

6月にまとまる大綱がどうなるのか、
結果が出た段階でまた書きたいと思います。

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  • 【紙月】
    紙媒体を中心に書くライター。
    福祉業界での実務経験がない中で、
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    社会福祉士めざして一念発起。
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